テキストは神、画像は泥沼:生成AIに何でも「丸投げしてはいけない」理由
AIは神なのか、悪魔なのか。
間違いなく頼れる相棒なのだが、ときどき挙動不審(?)になり困惑することもあり悩ましい。
AIはすごい。
情報を収集して整理することも、その情報に基づいて分析することも、仮説を立てることも、文章を書くことも、あっという間に終わる。
ブログに専門情報をたくさん掲載する手法が、少し前はWeb集客の王道だった。でも、今はあまり集客できていない。なぜなら、検索すると先にAIの回答が検索結果画面に表示されるからだ。
そして、専門情報を記事にするのはAIが得意だ。だから、どの会社も同じような記事を作れてしまう。
そんなとき、「人間は知能の頂点から降りて、AIのペットになるんじゃないか。」という記事を読んだ。
主人に忠実な「犬」ではなく、気まぐれで、マイペースで、ときどき何を考えているのかわからない猫です」という仮説がおもしろいなぁと思った。
気ままな「猫」のような生き方っていうかも…
そして、先日それが実現できるのではないかという出来事があった。
休日に半日かけてやろうとしていたリサーチ作業が、AIを使ったらわずか「2分」で終わってしまったのだ。
やっぱり、猫になろう…。
ところがその1週間後。
AIと何度もやり取りをして格闘したあげく、「結局、人間が手作業で切り貼りした方が速い」ということも体験しました。
なぜ、ある作業では「神」のように優秀なAIが、別の作業では「ポンコツ」になってしまうのか?
「生成AIの得意と不得意の境界線」を、私の体験から整理しました。
1. 成功体験:焼き芋を食べている間に「2年分の特集」が一覧表になった日
ある日、自分のSNSを設計するために、読者が興味ありそうな雑誌から、過去の特集記事をまとめてみようと思った。
まずは、地元の図書館へ足を運んだものの、目当ての雑誌は置いていなかった。
調べてみると、中心部の大きな図書館にならあるとのこと。
「じゃあ、カフェで別の本でも読もう」と思ったら、休日のカフェはどこも満席。
……もういいや!(笑)
すぱっと諦めて、ちょっと買い物をして家に戻った。
そして、買ってきたホクホクの焼き芋を食べながら、ふと思ったのだ。
「あれ? これ、AIに頼めばいいんじゃない?」
試しに「この雑誌の2年分の特集記事を探して一覧表にしてください」とAIにお願いしました。
すると……
雑誌「2年分」の特集記事一覧が、わずか「2分」で一覧表になって出力されたのです。
ちょっと手直しは必要だけれど、十分に使える。
「はやっっっ!!!。家で仕事が終わった!!!」
図書館まで足を伸ばそうとしていた私の半日は一体何だったのか。
「人間は焼き芋を食べて、AIに働いてもらう。これこそが令和の情報収集だね!」と、感動した瞬間でした。あとでチェックが必要だと思いますが、リサーチの時間が劇的に縮まりました。
2. 絶望の始まり:意気揚々と挑んだ「Webバナー制作」での大泥沼
その成功体験からわずか1週間後。
ホームページに掲載する、サービスのPRバナーを作ることになりました。
私はデザイナー職ではないので、仕上げるまでに試行錯誤して時間がかかるので、ちょっと億劫な気持ちになりました。
でも…
- キャッチコピーはすでにある
- 現場で撮影した写真もある
- 掲載場所の推奨サイズ(ピクセル)も決まっている
「先週AIでぱっと仕事ができたのだから、バナー作りもAIにお願いすれば一瞬で洗練されたデザインになるはず!」
そう信じていました。
バナーの構図にもAIと壁打ちして作り、ラフ案も作った。
そして、AIでバナーを作るためのプロンプトも作ってもらい、それを入力しました。
ところが、ここからが果てしない格闘の始まりでした。
まず、最初に出てきたバナーは、ぱっと見は素晴らしくてこれでOKと思ったのですが…
よく見ると、何か違和感があったのです。
① 実物の形を勝手に作り上げる
まず、現場の機材の写真はそのまま使ってほしかった。
写真を読み込ませ、「この実機に忠実に」と何度お願いしても、実物の写真の角度が違う。
「そこじゃない!」「形が違う!」と修正を頼むたびに、別のパーツが勝手に変わりました。
② ピクセルの厳密な概念がない
「横幅1200ピクセルで」と頼んだのに、上がってきたのは980ピクセル前後の画像。
「1200ピクセルに配置し直して」と指示したら、画像をそのまま横にビヨーンと引き伸ばし、きれいな正円がただの楕円に変形しました。
③ 作業を人間に丸投げ???
あまりにも言うことを聞いてくれないので、いったん画像生成をとめて、相談してみました。
「どうしたらいい? 全然実物の形にならないんだけど」
返ってきた回答は、まさかの言葉。
「AIは一部分だけを修正するような作業は不得意だから、さおりんが編集した方が100%早くて正確です」
……えええええっ!?
ここまで一緒に試行錯誤してきたのに、最後は人間に丸投げですか!?
結局、私はAIで完成形のバナーを作るのはあきらめ、パーツだけAIに切り出してもらい、自分で編集して仕上げました。
「人間がのんびりしている間にAIが働く」どころか、
「AIの尻拭いのために、人間が必死に手を動かしている」。
完全にAIに使われる側になっていたのです。
3. なぜ「情報整理」は神で、「画像生成」は破綻したのか?
この極端な落差は、指示が下手だったからでも、AIの機嫌が悪かったからでもありません。
どうやら「言語モデル(テキストAI)」と「画像生成AI」の仕組みの違い(構造的な限界)に原因があるらしいのです。
| 比較項目 | 雑誌特集の抽出・整理 | ある機器のWebバナー制作 |
| 扱う領域 | 言語・知識・テキストデータ | 空間・正確な物理形状・ピクセル座標 |
| 求められる精度 | 意味の正しさ、要約、構造化 | ピクセル単位の配置、写真データの完全再現 |
| AIの挙動 | 【超得意】 既存のテキスト群から法則を見つけて整理 | 【超苦手】 学習データにない唯一無二の形状を狂いなく描く |
| 結果 | 半日かかる調査が「2分」で完了 | 何度指示しても直らず、結局手動で切り貼り |
※この表もAIに出してもらいました
AI画像生成が「制作物」で破綻しやすい3つの技術的な理由
「描画」ではなく「確率による連想ゲーム」である
テキストAIは文脈や論理を追跡できますが、画像生成AIは「指示語から連想される確率の高いピクセル」を連想して絵を生成しています。
人間の感覚では、実物の写真を利用して作図しているように感じますが、実際はAIが入力されたプロンプトや見本の画像を分析して、予測のもとに絵を生成しています。
ですので、何もないところからイラストを描くときは問題なくても、実写で精密なものを組み合わせるときは注意が必要です。
ピクセルや座標の概念を厳密に管理できない
デザイン制作では「余白を何ピクセル空ける」「比率を保ったまま変更する」ということはよくあります。
今回使った画像生成AIでは、ピクセル単位の寸法や配置を厳密に制御することが難しかったようです。ですので、横1200ピクセルになればいいと、描かれているものの状態を無視して、横に引き伸ばしてしまうこともあります。
「できません」と言わずに「できる風」を装う
AIではできないことも、「その指定は仕様上無理です」と断らず、それっぽい別物を出力してしまいます。ここが、AIと人間の間にある大きな溝なのかもしれません。
「あと少し指示を変えればいけるかも」と期待して泥沼にハマる構造になっています。
4. 知っておくといい「AIと人間の正しい役割分担」
このふたつの経験から学んだことは、これです。
AIに任せる領域(0 → 1 の壁打ち・情報圧縮)
- 大量のテキスト情報の要約・整理(雑誌特集のリスト化、リサーチ)
- アイデア出し・キャッチコピーの大量生成(切り口の壁打ち)
- デザインのトーン&マナーの提案(配色、フォントなど)
人間がする領域(1 → 10 の精度保証)
- 実物写真の取り扱い
- ピクセル単位のレイアウト・配置
- 「企業の誠実さ」を損なわないための最終判断
5. まとめ:最後に仕上げるのは、いつだって人間の判断
生成AIを自分の仕事のパートナーとするときは、そもそもAIに丸投げしていい領域と、人間が行う領域を区別しておくことが大切です。
なぜなら、AIは魔法の杖ではないからです。
スケジュール管理、情報収集、校正などでは「神」のようなアシスタントになりますが、不向きな仕事を無理にやらせれば、人間をこき使うやっかいな上司に早変わりします。
「AIの得意を見極め、都合よく使い倒し、最後の仕上げと責任は人間が引き受ける」
これが人間に必要なAIを使うスキルだと痛感した出来事でした。